川本 渓太 『 - おもての風景 - 』
長い間、このモチーフを描き続けているが、どうしてこのモチーフに固執しているか自分でもよくわからない。昔、小学生の時に作ったお面を着けた自画像を描いた事がある。その時、お面を着けることにより顔面がもつ生動が消え、怪しさを帯びる事に深く関心を持った。些細なきっかけだが、そこからずっとこのモチーフを追っている。お面を着けるとはどういうことか。他人からの眼差しに対する防御か、それとも社会的役割を演じる人格の外面か。本来であれば活き活きとこちらを眼差しているはずの子供たちが、絵画の中で架空のお面にすり替えられることにより表情を失う。日常的な風景から、そこに潜む奇妙なものを暗に示しているような。
デビッドリンチが監督をした、ブルーベルベットという映画がある。
オープニングで、のどかな町の風景と、ミクロの世界で死屍累々を蠢く蟲たちが映し出された。少年の頃に観たそのイメージがどうしても忘れられない。