展覧会に寄せる言葉
こんにちは。作家の藤田 明です。
私は自分の作品を「絵画インスタレーション」と呼んでいます。「インスタレーション」とつけるのは、絵画の枠におさまらない、空間との関係のもち方、響きあい方を重視しているからです。一方で、「絵画」とつけるのは、絵画がもつ豊かさを引き継いだり、その幅を広げていく仕事だと思っているからです。今回の企画は、「絵画の前後左右」、つまり絵画のもっている空間的な広がりや、時間的な広がりを見つめ、考える場にしようと考え、展示づくりを進めていきました。
同世代の作家たちの、作品の源泉となる場所や、作品が生まれるアトリエ、あるいは購入されたあとの作品が佇む空間を、実際に尋ねていく中で見えてきたことは、作品が生み出される具体的な場所としてのアトリエのほかにある、作家の中の「心的なアトリエ」のようなものの存在です。作家が作家然としていられる場としてアトリエを持つことで、作家であることが証明されるのではなく(物理的な支持体としてのアトリエは、もちろん必要なのですが)、真に芸術性が励起している瞬間としての心的なアトリエ。
流れるような生活のなかで、それぞれが感性のある眼を持って物事を見る瞬間があり、その時々の手元や頭の中で絵画が芽吹いているのです。
絵画が興る。その息遣いが伝わってくる展示にしようと思っています。是非ご覧ください。
(藤田 明)